プラスチック添加剤とは
添加剤は、プラスチック製品を作る過程や、製品の利便性、耐久性を向上させるために使用される化学物質です。目的に応じて多種多様な添加剤があり、用途に応じ使い分けられ、様々なプラスチック製品が作られます。プラスチック製品を作る上で、無くてはならない存在なのが添加剤です。
しかし、添加剤の中にはヒトや生物に毒性を示すものも発見されており、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」 通称 POPs条約 において、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等が規定されています。
ちなみに、EU圏内では、化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則として、REACH規則があります。EU圏内で1トン以上の製品の製造・輸入を扱う場合、基準に準じる必要があるとのことです。
添加剤の問題点
添加剤の問題点は、大きく分けて2つあります。
1点目は、人体に影響のある添加剤が使用されている点です。現時点において広く使用されている場合でも、人体への影響有無が分かっていない添加剤もあります。また、見た目では人体への影響有無が分からないので、経年劣化や使用状態によって添加剤が製品外部へ浸み出し、知らない間に摂取している場合もあります。
出所:兵庫県内の河川および大気中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の汚染実態について
2点目は、POPs条約に加盟していない国には、規制が無いことです。2024年2月15日時点のPOPs条約加盟国は、189ヵ国 (※きれいな街からきれいな海に調べ) で、ほぼすべての国が加盟しています。しかし、POPs条約に加盟する以前や、POPs条約内で規制対象となる前のプラスチック製品には、有毒な添加剤が使用されている可能性が高く、1点目と同様に、知らない間に人体に影響のある添加剤を摂取している可能性があります。
添加剤による汚染と人体への影響
プラスチック添加剤による自然界の汚染状況や、人体への影響について検索サイトで調べると、数多くの情報が出て来ます。日本に限らず世界中が既に汚染されていて、POPs条約やREACH規則のように、汚染物質の使用や製造を規制する動きもあります。
プラスチック添加剤による汚染は、河川や海に流出したプラスチックごみからも発生しますが、普段使っているプラスチック製品からも、添加剤が染み出ていることが指摘されています。
出所:魚介類中ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の汚染実態調査について
プラスチック添加剤は、環境ホルモンのように振舞う点で人体への影響が懸念されていますが、因果関係を解明するには至っていない添加剤は、規制対象となっていないケースが多いです。また、仮にPOPs条約やREACH規則にある規制値内であっても、乳幼児や子ども、大人の体格差や、プラスチック製品と接する機会や使用頻度によって、影響度合いは異なります。
こちらの論文「環境ホルモン物質の人への影響」では、精子数、精子運動の機能低下、精子奇形率の上昇、精巣がん、前立腺の増加、子宮内膜症、不妊症、子宮がん、卵巣がん、乳がん、外部生殖器の発育不全、停留睾丸、アレルギー、自己免疫疾患、IQの低下、性同一性障害、パーキンソン病 などが、環境ホルモンとの関連が疑われている人への影響として書かれています。性別や年齢にかかわらず、影響懸念が示されています。
本ページはプラスチック添加剤について、大まかにお伝えしたにすぎません。人の手で生み出したプラスチックですが、様々な所で影響が出始めているのも事実です。今後、プラスチック製品との向き合い方を考える際の参考にしていただければ幸いです。
POPs条約
1992年 地球環境サミットでのアジェンダ21を受けて、
1995年 国連環境計画 (UNEP) 政府間会合で「陸上活動から海洋環境の保護に関する世界行動計画」が採択。
その中で、12の残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants : POPs)について排出の廃絶・低減等を図る国際条約の策定が求められました。
1997年 UNEP第19回管理理事会を契機にその後5回の政府間交渉委員会が開催され、
2001年5月にストックホルムで開催された外交会議において条約が採択されました。
2004年2月17日、締約国数が50に達したこと受け、
その90日後の 2004年5月17日 に条約が発効しました。
その後、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)における専門家による検討を経て、締約国会議において新たにPOPsに指定された物質が随時追加されています。
出展:経済産業省 POPs条約
REACH規則
2006年12月18日 欧州理事会で採決
2006年年12月30日 官報公示を経て、
2007年6月1日 発効
欧州連合 (EU) における化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則。名称は(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals) の頭文字をとって REACH (リーチ) と呼ばれています。
また、REACH規則については、厚生労働省が作成したプレゼンテーション資料 や、環境省が作成した概要資料があります。いずれも要点が分かりやすく記載されていました。
関連情報リンク
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