プラスチックごみによって、海洋動物や鳥が被害に遭っていることをご存知でしょうか。自然界にプラスチックが放り出されると、生分解しないため、ほぼ永久に自然界に残り続けます。そしてそれらは、人知れず海洋動物や鳥を苦しめ、無益な殺生が引き起こされています。
いま分かっている被害の形態を分類すると、1つは、摂取による被害。もう1つは、絡みつきによる被害です。
摂取による被害
鳥たちにとっては、木の実や果物に見えているのだろうか。魚たちにとっては、プランクトンの一種として見ているのかもしれない。自然界に放り出されたプラスチック製品は、紫外線や風雨、川の流れや潮の満ち引きなどで細かく砕かれていきます。小さく砕かれた色とりどりのプラスチック片は、海洋動物や鳥たちにとって、食べられる餌に見えているのだろう。しかし、それらを摂取したことにより、餓死や内臓損傷等で死に至ったと考えられる事例が多く報告されています。
出所: Environment Canada Microplastics in marine ecosystems off the coast of British Columbia
同様に、カメやクジラたちはプラスチック製レジ袋を摂取したことにより、死に至ったと考えられる被害事例も多く報告されています。
出所: NATIONAL GEOGRAPHIC
この件に関して興味深い報告があります。死因不明のカメの体内からは、死因が分かったカメよりも多くのプラスチックが発見されているとのことです。詳細については、こちらの論文 「A quantitative analysis linking sea turtle mortality and plastic debris ingestion (2018)」に記されています。プラスチックを摂取したことで、満腹感が継続されたことや、栄養が吸収できなくなったことが原因ではないかと推察されています。
絡まりによる被害
強度や耐久性を向上させるため、漁業で使用される多くの漁網には、プラスチック繊維が使用されています。そして、理由は様々だろうが、相当数の漁網が海に投機されており、海洋動物たちの凶器になっています。ゴーストネットとか、ゴーストギアや、ゴーストフィッシングと呼ばれている被害です。これらの投棄された漁網に、人知れず海洋動物が絡んでしまい、身動きが取れなくなる事例や、網が身体の一部に絡んだ状態で生活することを余儀なくされているのです。絡んだ網を断ち切ろうと、もがくことでより深刻な状況となっていることもあるようです。
出所: 640,000 Metric Tons of Ghost Gear Enters Oceans Each Year
出所: NATIONAL GEOGRAPHIC
出所: NATIONAL GEOGRAPHIC
珊瑚も、投棄された漁網の影響を受けて、成長できなくなったり、死滅したりしているようです。
出所: NOAA = The Impacts of Ghost Nets on Coral Reefs
こういった事態は世界中の海で起きています。ですが、我々はその痛みを知りません。知ろうとする人が少ない現実もあります。直接手は下していませんが、言い訳に過ぎません。1人ひとりが、今の生活を振り返り、今の当たり前が本当に持続可能な選択肢を選び抜いた結果かどうかを、省みて、改善に向けた行動をすることが、本当に持続可能な社会の実現への一歩だと思います。ご一緒にその一歩を踏み出せれば幸いです。
最後に一つの論文を共有させていただきます。こちらは、世界の海で起きていることを把握しようと、実に747件もの報告書から、海洋動物や鳥の摂取状況をまとめたものです。いくつもの研究から、多くの海洋動物の体内からプラスチックが検出されていることは、紛れもない事実のようです。
出所: Marine Pollution Bulletin
出所: Marine Pollution Bulletin
既に、これほどの多くの研究結果があります。知る切っ掛けにしていただき、我々の生活を見直す機会にしていきましょう。
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