はじめに
戦後の目覚ましい発展で、日本は経済的には豊かな国となりました。しかし、経済を動かす上で重要なエネルギーの石油は、ほぼ100%輸入に頼っています。また、その石油から作られるプラスチックは、大量消費&大量廃棄をしていますが、廃プラスチックを自国で処理しきれず、他国へ輸出し続けています。この点について、日本は持続可能ではない発展をしていると感じます。
ここでは、廃プラスチックに関する条約に触れ、プラスチックとの向き合い方を考える際の参考情報にしていただければ幸いです。
バーゼル条約
有害な廃棄物による悪影響から人間の健康と環境を保護することを目的に、有害な廃棄物の国境を超える移動およびその処分の規制について、国連環境計画 (UNEP) と経済協力開発機構 (OECD) により国際的な取り決めを制定したのが、バーゼル条約です。正式名称は、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」で、1989年3月22日にスイスのバーゼルにて採択され、1992年5月5日に発効されています。
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そして、この条約に、廃プラスチックに関する項目追加の決議がされたのが、2019年4月。 ジュネーブで開催されたバーゼル条約締約国会議 (COP14) のことです。背景の一つに、2017年7月に、中国がこれまで行ってきた廃プラスチック輸入を突如禁止することを発表し、2018年から禁輸政策が始まったことがあります。
元々、中国などの新興国は、廃プラスチック輸入によって経済発展を狙っていました。しかし、環境や人体に影響を及ぼす物体が混じったプラスチックごみが目立ったことから、中国の禁輸政策が発動される事態に発展しました。以降、ASEAN地域の国々からも規制強化の動きが加速しています。
経済発展の裏で、先進国の処理しきれないプラスチックごみが、処理費用の安い第三国へ輸出されている現実が、あぶり出された形です。
バーゼル条約 改正概要
廃プラスチックに関するバーゼル条約の改正付属書は、2021年1月に発効され、環境や人体に影響を及ぼす物体が混じったプラスチックごみの輸出入が行われないような基準が追記されました。日本から海外へプラスチック廃棄物を輸出する際は、下記の該非判断 (下図) を行い、規制対象外の廃プラスチックは、輸入国との事前同意を得た上で輸出することが可能となっています。つまり、輸出入が禁止されたのではありません。
◆輸出する際の手引き書 (環境省)
出所: 環境省 廃棄物等の輸出入管理の概要 より
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◆廃プラスチックに関するバーゼル条約改正附属書 (環境省)
出所: 環境省 プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準 より
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◆バーゼル条約 改正Ver. (UNEP)
出所: UNEP より
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さいごに
ご覧いただいた通り、廃プラスチックの輸出に関する条約により、先進国と新興国の間においても、異物や汚れの無いプラスチックの公正な輸出入が出来るようになりました。しかし、そもそも処理できない程のプラスチックを使用していることが課題だと思うので、上記のような情報も活用いただき、如何に無駄なプラスチックを減らしていけるかを、皆さんとご一緒に考えていけたらと思います。
関連情報リンク
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