中国の禁輸政策や、国際条約改正の一因となったプラスチックごみの量。どれ程のプラスチックごみが日本で発生し、どれ程のプラスチックごみが海外へ輸出されているかについて、確認してみようと思います。
日本のプラスチックごみの量
どれ程のプラスチックごみが日本で発生しているかを調べたところ、一般社団法人プラスチック循環利用協会のホームページで公開されているパンフレット「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」の中から数値を見つけました。
※画像をクリックすると、一般社団法人プラスチック循環利用協会のパンフレットが開きます。
1995年から2021年の27年の推移がグラフ表示されており、2005年から2021年の17年間は表に詳細な数値が記載されていました。これらによると、廃プラスチックは産業系と一般系の2つに大別されており、それぞれの占める割合は、概ね半々となっています。また、廃プラスチックの総量は、2005年 1000万トンから2021年 800万トン と2割ほど減少しているものの、800万トンという物凄い量のプラスチックごみが日本から発生していることに気付かされました。
また、有効利用量なる数値が表には記載されており、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3項目の変遷も知ることができます。
1つ目のマテリアルリサイクルは、その名の通り素材を循環させるリサイクル方法です。物から物へのリサイクルとも言われますが、廃棄物を原料として使うことからマテリアルリサイクルと呼ばれています。2005年から2021年で、概ね200万トン前後で推移しており、廃プラスチック総量に対して、概ね 20% がマテリアルリサイクルされていることが分かりました。
※古紙から再生紙や、ペットボトルから化学繊維に循環させる方法が、有名なマテリアルリサイクルです。
2つ目のケミカルリサイクルは、化学処理を施すことで違った化学物質に変化をさせるリサイクル方法です。2005年から2021年の間、30万トン前後で推移しており、廃プラスチック総量に対しては 3%程度 と割合が低いことが分かりました。
3つ目のサーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃やした際に発生する熱をエネルギー回収するリサイクル方法です。絶対量は500万トン程度と、3つのリサイクル方法の中で最も多く、比率も増加の一途に見えます。廃棄物をそのまま再利用するわけではないので、個人的にはリサイクルと呼ぶことに抵抗感を持ちますし、海外ではリサイクルの一部とはせず、単に焼却時の熱回収やエネルギー回収と言われています。日本がリサイクルと言いたいのは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが海外よりも進んでいない状況がありそうです。
以上が、日本で発生しているプラスチックごみの量と、各リサイクル方法の状況です。プラスチック使用量を減らす努力や、本質的な廃プラスチックのリサイクルを実施していく必要がありそうだと感じました。
日本から輸出されるプラスチックごみ量
では、中国の禁輸政策や、国際条約の項目追加を招く一因にもなった海外へ輸出されるプラスチックごみの量は、どうなっているのでしょう。財務省貿易統計を使って確認してみました。
※上記の画像をクリックすると財務省貿易統計のページにジャンプします。
統計データが引き出せた 1988年 から 2023年 の状況について、下記に図示化しました。1980年代後半は、4万トン程度でしたが、2010年から2015年は、160万トンを超えるプラスチックごみが、日本から世界へ輸出されていました。20年程で実に40倍にも膨れ上がったことが分かります。
※財務省貿易統計から当該データを引き出す方法はこちらをクリックください
輸出先については、中国の禁輸策が開始される2018年までは、大半のプラスチックごみが中国と香港へ輸出されています。しかし、禁輸策が開始された 2018年 以降は、中国と香港への輸出量は激減し、その受け皿として、台湾やマレーシア、ベトナム、タイなどの国への輸出量が増加したことが分かります。
考察
前述の2つのデータから、最新の2021年について数値を確認してみると、廃プラスチック総量 824万トン、マテリアルリサイクル量 177万トン、ケミカルリサイクル 29万トン、サーマルリサイクル量 511万トン。海外へ輸出されている62万トンは、マテリアルリサイクル量 177万トンの内数なので、総量からリサイクル量を引いた 107万トン は、サーマルリサイクルにも使用されず、ただ焼却されたか、埋立てられたか、そのまま国内に留まっているかのいずれかである。
焼却すると二酸化炭素 CO2 を排出し、地球温暖化を促進させる。埋立ては、時限爆弾と同じで、何百年も何千年も掛かって環境汚染を引き起こす懸念がある。そのまま留まっている場合も、状況によっては環境汚染の懸念は払しょくできない。やはり抜本的には、プラスチック使用量を下げること、そして、本質的なリサイクルを増やしていくことなどの対策が必要だと思う。いずれにしても、プラスチックとの付き合い方を、日本全国民で考えないと行けなさそうなことが、今回の件からも分かった。
ちなみに、107万トンの行方が気になって、冒頭で共有させていただいた「プラスチックリサイクルの基礎知識2023」を眺めていたら、未利用の廃プラスチック 107万トンは、単純焼却 63万トン、埋立て 45万トン と明示されていました。
そうすると、ごみの最終処分場である埋立て地が気になりますね。2040年には最終処分場が満杯になると言われています。増設することで一時しのぎは出来そうですが、抜本的にはごみの量を減らしていく努力を1人ひとり実践することが必要だと思いました。
関連情報リンク
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