体内からのプラスチック検出事例を紹介させていただいた 2024年4月 から 早3か月ほど。引き続き、体内からのプラスチック検出報告がされています。
この事実を信じたくない人も多いかも知れませんが、冷静に状況を受け止めていただければと願っております。また、多くの研究者は口をそろえて、人体への健康影響や生態系への影響懸念などを発しております。
この先、どういったシナリオになるかは、我々次第だと思います。現時点、「プラスチックリテラシー」という言葉は世の中に存在しないようですが、我々人類がプラスチックとの付き合い方を考え、行動していく一助になればと思い、こちらから発信させていただこうと思います。
事例は、前回同様にきれいな街からきれいな海に調査に基づき、発表順に並べて紹介させていただきます。項目上の日付は発表された日です。
《参考》前回の共有事例
項目クリックで事例にジャンプします
◆追加情報はこちら
項目クリックで事例にジャンプします
2024 / 5 / 15
From 精巣
本報告書は、精巣からマイクロプラスチックが発見された事例です。
※画像クリックで論文ページにジャンプします
昨今の世界的に憂慮される精子数の減少や、精巣発育不全症候群(TDS)といった男性生殖障害の増加などから、内分泌かく乱物質を含む潜在的な環境要因の調査が促進されていることが背景であると記されており、ヒト精巣サンプルは 16〜88歳の23人の死亡者から採取され、47匹のイヌとの分析が行われたようです。
平均総マイクロ&ナノプラスチック量は、イヌ 122.63μg/g、ヒト 328.44μg/g で、いずれもPEとPVCが多く発見されたとのことです。
これは、体内において広範囲でマイクロ&ナノプラスチックが存在することを浮き彫りにし、雄の生殖能力に対する将来の世界的な影響の可能性を示しています。
※未査読のプレプリント論文掲載のグラフを引用
※画像クリックで論文ページにジャンプします
2024 / 6 / 14
From 精液
続いては、精液からのマイクロプラスチック検出事例です。
様々なところに偏在し、体内からも検出されるマイクロプラスチックですが、そのマイクロプラスチックによる人体への影響はほとんど調査されていません。
中国の研究チームはそれらを明らかにしようと、中国の済南にて婚前の健康評価を受けている40人から精液サンプルを収集し、分析が行われたようです。
※画像クリックで論文ページにジャンプします
結果は、すべての精液サンプルからマイクロプラスチックが検出され、ポリスチレンが最も多い31%検出されたとのことです。次いでポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニル(PVC)も検出されました。
ポリスチレンに曝露された精液は、ポリ塩化ビニル曝露群と比較して、より高い精子の進行性運動性を示したとのことです。(43.52±14.21% 対 19.04±13.46%)。しかし、特定のプラスチックタイプと精子の進行運動性においては有意な関連性は見つけられなかったと記されて今いた。
マイクロプラスチックによる生殖への影響については、さらなる研究の必要性があると述べています。
2024 / 6 / 19
From 陰茎
こちらの論文は、陰茎から採取されたサンプルから、マイクロプラスチックが検出された事例です。
報告書によると、体内の様々な場所からマイクロプラスチックが検出されている事例があるものの、陰茎に関する評価が行われていなかったため、陰茎組織におけるマイクロプラスチックの状況を確認するために今回の調査が行われたとのことです。
調査は、勃起不全(ED)と診断され可膨張性人工陰茎(IPP)手術を受ける予定の6名の患者さんの協力で行われました。※本研究への同意が得られた上で評価が行われたと論文に記されています。
Detection of microplastics in the human penis
From IJIR; International Journal of Impotence Research
※画像クリックで論文ページにジャンプします
結果は、5人のうち4人の陰茎組織から、マイクロプラスチックが検出されました。
種類として多かったのは、ポリエチレンテレフタレート(PET) 47.8% と、ポリプロピレン(PP) 34.7% でした。この2種類だけで検出されたマイクロプラスチック総量の約82%に相当することが分かります。
この結果から分かることは、勃起不全患者の陰茎からマイクロプラスチックが検出されたという事実だけで、勃起不全がマイクロプラスチックによって引き起こされたかまでは分かりません。
しかし、陰茎や体内のマイクロプラスチックの存在は、男性の勃起不全に関連している可能性があり、さらなる研究が必要であると専門家は述べています。
※画像クリックで論文ページにジャンプします
多くの研究者が、マイクロプラスチックによる健康影響に懸念を持っているため、今後のより詳細な研究によって実態が明らかになってくるものだと推測されます。しかし、すでに多くの検出事例があり、健康影響の懸念が示されている状況において、詳細な実態解明が出てから行動を開始していては、「時すでに遅し」だと考えます。
そのため、これらの情報を参考にしていただき、冷静に物事を見定め、思慮深く考えることから、プラスチックとの付き合い方を考えて頂けると幸いです。
ちなみに今回の評価は、LDIR (Laser Direct Infrared) ケミカルイメージングシステムと呼ばれる20µm以上のマイクロプラスチックを検出する化学画像分析と、SEM (走査電子顕微鏡) という20µm未満のマイクロプラスチック検出できる装置が用いられたとのことです。